2020-01-12
そこでは産業化の初めに見透された、「私悪すなわち公益」というバーナード・マンデヴィルのシニカルであけすけな教えがあからさまな事実となる。マンデヴィルは神学を近代化したライプニッツの同時代人である(続く世代)。スミス・マルクスの理論化以来「資本主義市場」として隠された私欲というドブ川の蓋が、社会主義を踏み台にハイエクによって取り外され、やがて濁流となって世界を呑み込むにいたった。ハイエクの主張した無制約の「自由」、あらゆる「社会性」を否定し個を解き放つ「理想」。それを実質的に可能にしたのがデジタル技術なのである。しかしそれは個をも解体し、味噌もクソもの粒子状の欲望と絶望の奔流の中に「人間」を流し込もうとしている(だからもう「人間」は時代遅れだ、と言われる――そう言うのはとりわけニーチェ・ドゥルーズ)。自ら作り出したその絶望的(つまり未来がない)状況を、妄想的に抜け出ようとするのが、シリコンバレー成金由来でいま注目されつつある「暗黒啓蒙」の思想だ。
年寄りに出番はないとも思うが、一方で75才まで働けとも言われている。この気候変動とそれに目を背けて私利を追及する(だから「社会」などないという)者たちの作り出す不毛の旱魃地帯に、命の水を供給するような仕事を、それでも少しは続けたいと思う。
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